投稿日:2024.10.15 最終更新日:2024.10.15
長期現場レポート【二間の和室をLDKに】
本事例はTDYリモデルスマイル作品コンテスト2022「キッチン・リビング部門」最優秀賞受賞作品です。
*「TDYリモデルスマイル作品コンテスト」は、 TOTO、DAIKEN、YKK APが主催する施工業者による優れたリモデル現場実例を競うコンテストです。
銚子市在住、以前に浴室のリフォームをお手伝いさせて頂いたT様(50代前半)よりご依頼いただきました。
今回は築40年、ご両親が建てられたご自宅の二間の和室を、少し凝ったLDKにリノベーションしてまいります。元々使っていなかった二間の和室をLDKに改装し、北側で暗いというキッチンをこちらに新設します。
今回もお施主様は居住しながら工事を進めていきます。お施主様へはできるだけストレスにならないよう、配慮してまいります。
解体前の二間続きの和室です。どこを残すか、壊すか、解体業者さんとの綿密な打ち合わせを行います。
DIYが趣味のT様は、解体される予定の天井材を使い家屋の補修に充てるとのことでしたので、天井材はできる限り形を残して解体することになりました。
きれいに解体が終了しました。40年ぶりに露わになった土間や柱の状態は良好で、スムーズに工事が進められそうです。
配管工事、電気配線工事を経て、大工工事が進行しています。
床を支える縁の下の力持ち「大引き」を作っています。元の木材にピタッとハマるように作ります。
サッシも交換するため、元の部分を手作業で解体していきます。
解体後の天井はそのまま魅せる予定のため、こちらの梁は少し上にあげる予定です。
こちらの筋交のある場所には大きな掃き出し窓に加えて、ブレスも設置予定です。
この状態からどのように変化していくか、我々も楽しみです。
まずは床面の半分、断熱材まで詰め終わっています。
床下から覗いても、ピッチリと隙間なく詰めているのがわかります。外の寒さや暑さが建物内に侵入しないよう、部屋の気密性を高めることができます。
大引きを支え荷重を地面に伝える役割の床束は、鋼製束を使用。
昔は束石の上に大工さんが現場採寸した木材を取り付けていたのが一般的でしたが、木の束は乾燥による収縮や床鳴り、床下の湿気による腐朽、白アリの被害を受けるといった問題がありました。
一方、鋼製束は白アリ被害を抑えることに加え、束の高さ調節を可能にしています。
また、大引きの乾燥収縮に対する対応も可能な上、リフォームの場合は床の水平を取り直す際にも、1本ごとに細かく高さが調節ができるので欠かせません。
みえなくなる部分にこそ、現場や環境に合わせて気を遣った施工をしています。
40年ぶりに露わになった天井裏。海沿いにも関わらず、木材の状態は乾燥していてとても良好だと、大工さんが教えてくれました。
外した柱には、家族の歴史ともいえる数々の古傷がありました。先達の職人が遺した40年前の労作に、いまの職人の技術を組み合わせ、時代を超えた快適な住まいを作り上げていきます。
床には断熱材を敷き詰め、下地合板も貼り終わりました。
合板の上に貼る15mmの床材が、サッシの間にピッタリ入るよう調整されています。
反対側も敷居との段差が無くなるような調整もされています。
写真の梁の位置を上に挙げる作業です。
サッシもすべて、断熱サッシに交換していきます。
お施主様へは引き続きご不便をお掛けして参りますが、できるだけストレスにならないよう、引き続き配慮してまいります。竣工後には暮らしが変わり、お客様にとってさらに明るい1年となりますように。
昨日より新年の作業を開始し、最初の行程である梁の位置を上に挙げ終わりました。
本日からは外壁の解体と大工工事を同時に進行しています。二間の和室はスケルトン状態に。
大工さんが外枠を作り、断熱性能の高いサッシをはめ込みます。
道路側には特注の大きな掃き出し窓が入り、ブレスも入ります。仕上がりが楽しみです。
サッシが入り始めました。道路側の特注窓とブレスはもう少し後になります。
二間ある大型のサッシは日差しがたっぷり入ります。複層ガラスなので断熱性能も○。
本日からフローリングを張り始めました。
予めつけた墨に合わせてフローリングをカットします。
無垢のフローリングは色艶もよく、とても日差しに映えます。
フローリングもミリ単位で調整しています。
築40年、少しだけ曲がってしまった床に合わせ、フローリングがピタッとハマるように。
真壁から大壁にするために古い筋交に新しい柱を組み合わせ。
まだ外壁のできていない箇所は、作業後にベニヤ板を張り雨風をしのいでいます。
夕陽がきれいな港町です。来週からは電気工事もはじまります。
大きなサッシのはめこみと、キッチンの据付が終わっています。
左側の窓には写真のブレースを対角線に組み込み、光を取り入れてながら耐震性を高めます。
キッチンは無駄なく動けて使いやすい、TOTOの”ザ・クラッソ”対面アイランドを採用。
タッチレスな水ほうき水栓やキレイ除菌水などの優秀な機能面だけでなく、暮らしと融合するシンプルなデザインとディテールも魅力です。
無垢のフローリングももう少しで貼り終わります。これからはいよいよ、壁や天井を作っていきます。
フローリングも貼り終わり、壁や天井の石膏ボードを貼る前の段階まできました。
ここがリフォーム職人の腕の見せ所です。
古い建物の柱のほとんどが、しなっています。なぜなら木は、湿気や乾燥で膨張や収縮を繰り返します。そこに自重や屋根の重みでしなったり曲がったり、木にくせがつきます。
場所によっては割れているところもあります。もちろん柱はすでに正方形ではありませんし、
水平器や差金をあててもご覧の通り。意味がありません。
もちろんこのままの状態で石膏ボードを貼ると、曲がった壁になってしまいます。
だから、調整が必要になります。
曲がってしまった木が垂直水平になるように、新しい木を加工していきます。
普通の天井であれば、簡単に水平を保てますが、今回は梁を魅せる天井にリフォームするため、新しい木材を1本ずつ加工、調整しています。
「天井や壁が曲がっていると、パッと見はわかりませんが、ライトが当たった時にとても違和感を感じてしまう。だから水平にしなきゃいけない」
そんなことを親子で活躍されているベテラン大工さんが教えてくれました。
断熱材も入れ終わりました。いよいよ今週で大工工事も終わります。
外壁工事も終わりました。
割石の繊細なテクスチャーが魅力のステディストーンのブラックを採用。
室内はボードを貼り終わりいよいよ大詰め、塗装工事が開始です。
室内はクロスを貼らずにすべて塗装で仕上げます。だからネジ穴やつなぎ目をすべてフラットにしていきます。
特にボードのつなぎ目は凹凸が多いため、パテを3回、4回と時間をかけて塗っていきます。
元の柱は石膏ボードで四角に囲った箇所や、そのまま残す箇所の2つに分けました。
レンジフードのダクトも剥き出しにして無骨でもオシャレな印象に。
この空間のほぼ全てが白に塗装されます。
祝日明けの本日、養生をしっかり行い、いよいよ塗装開始です。
塗料が飛ばない箇所はくまなく養生を行います。
カップボードを取り付けるキッチン裏の壁は先に塗装を実施しました。
ボードの部分はローラーで三度塗りを実施します。
三度塗りを施した壁はまるで白雪のように、しっとり滑らかな印象です。
躯体現わしにした天井は凹凸が多いためコンプレッサーで塗料を吹き付け、まんべんなく二度塗りします。
こちらは一度塗りの箇所。少しムラがわかります。
二度塗りを施すとムラがなくなり、古い木材でもスムーズな仕上がりに。
寒い中、懸命に作業をしていただいている職人さんは塗装歴30年のベテラン。「天井躯体を白く塗装することはこのあたりでは珍しい。だから楽しんで仕事できているよ」。差し入れしたホットコーヒーを片手に、そんなことを教えてくれました。
無事に塗装が完了しました。
真っ白に塗装された天井に現わしの躯体が映えます。
躯体の現わし部分は2度塗りの予定でしたが、ムラが残ったため3度塗ったとのこと。「こればっかりは木の乾燥や塗料の吸い込み具合によるので、やってみないとわからないんだよね」と、職人さんが教えてくれました。
カーテンレールを取り付ける職人さん、赤も映えます。
一方、黒でシックな色合いのカップボードにはコーキングが施されました。慎重に養生を剥がします。
コーキングと塗装の境目がわからないほどの滑らかな仕上がりです。
ふと目を廊下にやるとお施主様とお子様の印象的な昔の写真がありました。家族の思い出が詰まった大切な家のリフォームです。最後までひとつひとつ丁寧に進めてまいります。
養生が外れ、床やキッチンなど全体像が露わになりました。黒のアイランドキッチンが白壁に映えます。
無垢のフローリングにはたっぷりの陽射しが映えます。
お引き渡しまで、もうすぐです。
お引き渡しから5日後、撮影にお邪魔いたしました。
ライトやシーリングファンも設置されて、まるでお店のような空間に。
耐震性を強めるために、左側窓にはブレースの筋交を入れています。
鉄筋を使い、ダクトレール自体を天井から吊り下げているため、ブレースとの相性も抜群。
シンプルな美しさのあるモダンな空間が出来上がりました。
キッチンは無駄なく動けて使いやすい、TOTOの”ザ・クラッソ”対面アイランドを採用。
タッチレスな水ほうき水栓やキレイ除菌水などの優秀な機能面だけでなく、暮らしと融合するシンプルなデザインとディテールも魅力です。
同じく鉄筋で吊り下げた黒のレンジフードに白い壁、無機質なダクトを露出させて取り付けていますが、ナチュラルな木の柱が1本入ることで、無骨な印象も和らぎます。
シーリングファン、スイッチ、ペンダントライトなどの個性的なアイテムが、モダンな空間をより一層引き立てます。
【以前のキッチン】
以前は昼間でもほとんど日が当たらないキッチンだったのが一変、どこからでも日差しが降り注ぐあたたかいLDKに。
「暮らして数日ですが、とても快適です。子供が独立したら二間続きの和室を改装しようと10年前から考えていたこと。その想いが叶って嬉しいです」
リフォーム前から引き継いだ梁と時計が印象的。まるでT様ご夫妻の新しい暮らしを見守っているよう。
T様、この度はご用命くださりありがとうございました。今後とも末長いお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。